NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
二つのダークな白い吐息⑦



ノボルと三貫野による”遠距離電話”での打合せは続いた…。

「…ほう、オレのノートが届いたか。それで、早速お前のと照合を…。それはご苦労さんだなあ」

三貫野は、椎名から熊本に届けられたノボルのマンストックの成果物たるノートを、すでに自分のノート群との照合に着手していた。
その旨を告げたあとのノボルからの言葉を耳にした三貫野は、なぜか感慨深い思いが胸にジーンとこみ上がってきた。

それは、自分が膨大な作業にかかっていることへの重要性…、それを何よりもノボルが理解してくれている上で、ねぎらいの言葉というのが素直にうれしかったのだ。

正直、武次郎からは、”そんなこと、今とっかからなくてもいいのに…”という本音が伝わってきているだけに、三貫野の心には一段と響くものがあったのだろう…。

だが、それはとりもなおさず、初めて手に取って目に触れた、ノボルのノートの中身に驚愕したこともあった。

...

”ノボルさんは自分のマンストックとは比べ物にならないと、オレのストックを絶賛してくれた。だが、実際にあの人のノートを完読したらどうだ!少なくとも、オレのに勝っている点がいくつかあったぜ”

三貫野を驚かせたのは、何といっても、そのノートを綴り始めた時期だった。

”あの人…、人の記録、リサーチを小学生になった直後から綴ってる。対するオレは中学に入る直前だった”

そして、ひと際感心させられたのが、小学校3年からはクラスメート”全員”の、”知り得たすべて”を克明にその都度書き留められていたことであった。

”クラス全員の家族や家の職業等の事象事実だけでなく、日常の出来事や級友間の仲がどうだとかの相関関係に至るまでだ。まさに…。この完全版は、彼が学校を辞めるまでずっとだった‥。凄い!”

そして、三貫野は改めて自身に誓った。

”これを活かしてやる!オレのストックと繋げてやる!いずれではなく、今の時点で…”

こののち、大打グループのNGなきアクション遂行に大きな武器となり得たツール、”人の”ビッグデータ集積という遠大な積み重ねの日常作業は、この時の三貫野の熱い執念からスタートするのだった…。




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