NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
大打ノボル、最終選択点”殺人コーディネート”に到達す…!
悪の研鑽⑧



椎名の語り口は俄然、熱を帯びていた…。

「そうさ、じっくり観察すれば単純にオレ達の数年後、それは肥やしにできる。坂内さんとの究極のパートナーシップを”開演”する段でな」

「…」

「ざっくりで言えば、星流会が都県境のガキにどうアプローチして、それに乗ったオレ達と同ラインのダサイ玉のガキ連中とどんなスタンスで組んでいくのか…。要はあそこの地で、見物すりゃあいいんだ。ますはどんな光景が展開するか、じっくり見学だよ」

「ふう…、見学ってか~。なんか修学旅行のイメージしか浮かばねえな…」

「いいか、武ちゃん。少なくとも、事実として広域やくざ直系傘下である星流会の侵攻を許していないガキ大将を知ることだけでも、我々にはそれこそ参考になると思わんか?それをみんなで検証し学習して、然るべき坂内スキームでこっちの最大限を取り込ませる…」

「だがよう、星流会はそう簡単に食い込めねえんだろ、ガキのフィールドに…。黒原とかって男の存在でよう。ずっとそのまんまじゃ、どうなんだか」

ここで椎名は思わずニヤリと笑った。
彼は、武次郎からの”このタマ”を待っていたのだ…。

...


「武ちゃん、それこそ、相和会の相馬さんと一緒だって。稀代のカリスマたる黒原が消える、去るのを待つ…。仮にそうなった際は、ガキスキーム創案者たる諸星さんがどんなガキを抱え込んで、どういったスキームに持ち込もうとするのか、それを間近かでしっかり拝見さ。それは何も、黒原というカベがたちはだかる今からでも垣間見えるはずだ。折本さんはさ、大打グループ進駐なら、諸星さんにうまくつないでくれると言ってくれてるしな」

「ふう…、じゃあよう、それってことならよう、視察というより潜入に近いな」

「まあ…、そっちの表現の方がより正確かもな。潜入して学ぶべきは学ぶ…。ぶっちゃけた話、熊本からくる御手洗がさ、将来的に諸星さんのパートナーとなるガキのリーダー格と接点、”お付合い”の道筋ができるって流れに乗れるんだ。その延長で、いろいろ有意義な情報くらいは得られるだろう。何と言っても、あそこはあの相和会のおひざ元なんだぜ!」

「うーむ、それは言えてるか。…よし!彰ちゃん、進駐先は東京北部、埼玉県境でオレも同意だ」

「武ちゃん!分かってくれてうれしい。ありがとう…」

”そうさ…、今日は結論先にありきだったんだ。ここは何としても、武次郎を説得させると。だからこそ、都県境の実情はこれまで伏せてきた。黒原の存在とかは、今日この時、一気に告げようと前々から考えていたんだ。その方が、説得材料としてインパクトが出せると…。今日はうまく行った。熊本の三貫野も安堵するだろう…”

全霊を以って武次郎を説得させた椎名…。
だがしかし…!

その達成感とあんど感の中に、どこかそれだけに浸れない、わずかな心の引っ掛かりがあった。
それは一体…。




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