時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第十二話 ブラッドフォード邸

「ですからね、アリシアと初めて会ったのは友人のアニスのお茶会なのです」

「そうか」



そろそろ手を離してほしい。

レオン様の時でさえこんなに手を握ったことはない。



「そのお茶会にも行かない方がいいな。他にアリシアとの接点はないのか?」

「時々、レオン様のお茶会に友人もと言われて会ったぐらいですね」

「レオン様の茶会に呼ばれることはないからもう会うことはないだろう」



そうでしょうね。

私の友人と思って呼んでいたのでしょうから。



それにしても、結構森の中に入りますね。



「オズワルド様、お邸は街から遠いのですね」

「一番近い街からも少し離れているからな。この道は邸に行く為の道だ。邸はもうすぐだ」



オズワルド様が、私が疲れないようにと休憩もとりつつ来たせいか、辺りはもう真っ暗だった。

その真っ暗な中、馬車の灯りのみで静寂な森の中の邸に続く道に馬車の走る音だけが響くように聞こえた。



正直、ちょっと怖い。

あの森からお化けがニヤリと出てくるのでは、と思うほど真っ暗だった。



森の中を進むと、明かりの灯された大きな邸に着いた。



ブラッドフォード邸だとすぐにわかった。



「リディア、着いたぞ。今日から一緒に住む邸だ」



オズワルド様に手を引かれて馬車を降りると、邸の玄関前に執事を筆頭に使用人が並び迎えてくれた。



マリオンもすでに並んでおり、無事に着いて良かったと、彼女を見て軽く頷いた。



「リディア、執事のリンクスだ」

「はい、よろしくお願いしますね」

「執事のリンクスです。どうぞよろしくお願いいたします」



オズワルド様の執事はまだ若く20代ぐらいだった。



彼の邸は立派で、新築ではないにしても邸内は綺麗で品のある邸で、案内された私の部屋は主寝室の続き部屋だが、広く、家具も綺麗に整えられていた。



「急いで整えたから、欲しい物があればすぐに言ってくれ」

「すみません、ご迷惑をお掛けしましたよね」

「気にしないでくれ。すぐに夕食にしよう。支度はできるか?」

「はい、すぐにドレスに着替えますね」



すでにマリオンがドレスの準備をしてくれていた為、すぐに支度に取り掛かることができた。



「ありがとう、マリオン。助かるわ」

「はい、それにしても大きなお邸ですね」

「ブラッドフォード家は代々続く名家だからね。急に引っ越しになってごめんなさいね」

「私は大丈夫ですよ。侍女にして頂いて光栄です。でも、すぐに婚約して、お邸に引っ越しなんて何かあったのですか?」

「まあ、色々とあるのよ」



まさか、時間が戻ってレオン様の婚約から逃げる為とは言えない。

この時間軸では、オズワルド様がすぐに婚約をしてくれたから、レオン様との婚約の話すらないのだから。



会話をしながらもマリオンはいつも通り、てきぱきと、支度をしてくれた。



支度を整え、マリオンに食堂に案内をしてもらおうと一緒に廊下を歩いていると、階段の所でオズワルド様が待っていた。



「リディア、一緒に行こう」

「まあ、待っていて下さったのですか?」



どうやら、部屋の前だと私が驚くと思って、階段で待っていたらしい。

マリオンは「では失礼します」と去って行った。



夕食は二人だったが、オズワルド様が優しいおかげか初めての邸に緊張がほぐれていくようだった。



< 12 / 100 >

この作品をシェア

pagetop