時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第十四話 突然の告白

ヘルハウス、もとい図書館はオズワルド様が扉に手をかざすと、キギッと音を立てて開いた。



中は思ったとおり、真っ暗で何も見えなかった。



「今灯りを点けるからな」



オズワルド様の手のひらに小さな青紫の灯火がボゥと現れそれを上の方に放り投げると、飛び散るように壁に飛んでいった。



そして、壁に当たった灯火の所から一斉に灯りが点き、図書館内が現れるように見えた。



「魔法の図書館ですね……」



オズワルド様の腕にしがみついたまま、思わずそう呟いた。



「灯りの魔法で点けられるのは、俺かリンクスしかできないから、夜は特に一人で来るなよ」

「そうします」



怖いですから一人は無理です。



「夜は図書館では読みにくいから、部屋に持って帰るか? 気になる本はあるか?」

「沢山あってよくわかりませんね。とりあえず、夜に読めそうな本を下さい」



本当は気になることがあるけど、オズワルド様に言ったら気にしそうだし、夜にやって来そう…。

また明日にでもリンクスと一緒に来よう。



そう思い、適当に物語の本を取ってもらった。



ありがとうございます、と言って本を受け取ろうと両手を出すと、オズワルド様が本をサッと上に上げた。



「あの、オズワルド様、本が受け取れませんよ」

「……誰もいないな、と思って」

「誰も来ないとオズワルド様が言ったのではないですか」



何なのかしら。

オズワルド様は私よりずっと背が高いから、本が取れない。

窓の外は、あの黒い鳥がギャアギャアと鳴きながら窓を叩いているし!



「……お前、レオン様とどこまでいったんだ?」

「何の話ですか? 婚約していたの知っているじゃないですか」

「婚約した後だ。まさか、手も繋がなかったのか?」



うっ、真剣な顔で聞かれても困る。

しかも、何故聞く!?



「無粋ですよ! 手ぐらい繋ぎましたよ!」

「いつだ? 本当に繋いだのか?」

「……ダンスや練習の時に繋ぎましたよ……」

「……それは手を繋いだと言うのか」

「悪かったですね! どうせ、経験値0ですよ! それよりあの鳥が気になりますよ! ずっと騒いでますよ!」



私に恋愛スキルがないのはわかっています!

レオン様とアリシアだって、私よりずっと進んだ関係だったのでしょう!



プイッと顔を横に向けると、オズワルド様の唇が頬に当たったのがわかった。



えっ、と思った。



「あれはペットのベルガモットだ。ちょっと待ってろ」



頬に手を当てたまま本棚にもたれ呆然としてしまった。



オズワルド様は窓際に行き、少し窓を開けて、黒い鳥に話しかけていた。

黒い鳥はギャアギャア言っている。



「ベル、うるさいぞ。リディアを怖がらせるな」



ベルと呼ばれた黒い鳥を見ると、目が合った。

そして、ギャア! と羽を広げ私に向かおうとしたのか、その瞬間オズワルド様が鳥の足を掴んだ。



「ベル、リディアを傷付けたら許さないぞ」



オズワルド様がベルと呼ばれた黒い鳥を睨むと、鳥は、けっ、とでも言いたいのかふて腐れたようにギャア! と鳴いて飛んでいった。



「大丈夫か? どうもベルはリディアに焼きもちを妬いているみたいだな」



オズワルド様が、窓を閉めながら言っている間も、私はただ立っていた。



「リディア、本当に大丈夫か? 顔が赤いぞ」



だ、誰のせいですか!



「オ、オズワルド様のせいです!」

「何だ、もう少しして欲しいならしてやるぞ」

「結構です! もう帰ります!」



オズワルド様は悪戯っ子のように笑っていた。



「リディア」

「何ですか!」

「まだ、好きだと言ってなかった」



突然の告白に驚いた。

オズワルド様は急に真剣な顔になっていた。



「……浮気する男は嫌いです」

「そんなことはしない。必ず大事にする」

「……本当にしませんか?」

「しない」



正直、レオン様と違うものをオズワルド様には感じている。



「……前向きに考えます」

「では、帰ろうか」



そう言い、差し出された手に載せ、オズワルド様と図書館を後にし、二人で真っ暗な庭を手を繋ぎ歩いて邸に帰った。







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