時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。

第五十三話 悪だくみにはエサが必要

「それにしても貸し切りなんてして良かったのですか？」

「問題ない。あの店のスポンサーは俺だ」

「そうなのですか」

「他にもレストランやコルクガシ、オレンジの栽培等色々あるぞ」

「まぁ、オレンジは好きです」

「なら、今度新鮮なものを持って来させよう」



オレンジは嬉しい。

それにしても色んなものを栽培しているのね。

魔法でその植物が育ちやすいように温度とかを近付けているのかしら。



気がつけばオズワルド様の腕が肩に回ってくっついていた。

くっつくのが好きなのかしら。

そう思いながらも、オズワルド様は止めろと言っても引く人ではなく、最近は抵抗することもなくなってきていた。

「そういえばこれからどちらに？」

「今日はもう邸に帰るのは面倒だからタウンハウスに泊まる。マリオンも呼んどいたぞ。小さい邸だがゆっくりできるぞ」

「……オズワルド様、何を企んでいるのですか？」

「今にわかる」



タウンハウスには、料理長も厨房メイドも使用人を連れて来なかった為、夕食はオズワルド様の持っているレストランに行き、ウィルとマリオンも食事がない為一緒にテーブルを囲み食べた。



「リディア様、私が一緒に席に座っていいのでしょうか？」

「気にすることないわよ。たまには一緒に食べましょう」



気にするマリオンをよそにオズワルド様はウィルとマリオンにもワインを薦めていた。
こういうところが凄く好きだ。彼は、人を身分で差別したりさげすんだりしない。



夕食も終わり、やっと寝支度ができる。

そして、寝る前にオズワルド様の部屋に行くと、何か書類みたいなものを見ていた。



「それは何ですか？」

「今日のブティックでフォーレ伯爵が買ったものだ」



見てみると結構な金額だった。



「こんなことをしていたら、半年と待たずに落ち目になりますよ」

「そうだろうな」

「……いいのですか？」

「ワイナリーは俺が買い取るつもりだ」

「欲しかったんですか？」

「真っ当にしてればまあまあの売り上げだし、あっても困らん」

「それだけですか？」

「エサが欲しかった。まぁ見てろ。明日も面白いものを見せてやる」



エサって何ですか？

また明日どこかに行くのですか？



「あの……変なことしないで下さいね」

「大丈夫だ。早く寝るぞ。こっちに来い」



そうして、答えが出ないまま翌朝を迎えた。