とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
もる子ちゃんの結婚が決まったのは、ちょうどわたしとひーくんが別れたくらいの時期だった。

康くんがもる子ちゃんの結婚のことをわたしに話さなかったのは、きっとわたしを気遣ってのことだろう。

それは康くんのやさしさで、感謝すべきこと。

だけど、わたしはうまく受け止められない。
気遣われて惨めだな、としか思えない。

卑屈の塊だ。

自分が満たされていないと、こうも捻じれてしまうなんて。

「どんなふうにプロポーズされたの?」

「普通だよ、普通。ロマンチックとか、そういうのはなかった。同棲して一年以上は経ってるしね」

もる子ちゃんはセミロングの髪の毛先をいじりながら言った。
これは照れているときの癖だ。

「普通っていうとシンプルに、結婚してください、とか?」

「はずれ」

「じゃあ、お前の味噌汁が毎日飲みたいとか、そういうやつ?」

「嫌だよ、そんな男。てめえでつくれよ、だよ」

もる子ちゃんはけらけら笑いながらチーズたっぷりのシカゴピザを口へ運んだ。
由紀ちゃんも食べな、と促されてわたしもピザを頬張る。
口の端から垂れそうなチーズを、すんでのところで人差し指で掬った。
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