とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「あのね。彼とお昼ご飯に焼きそばつくって食べて、なんか甘いもの買いに行こうってコンビニに行ったのね。
それでその帰り道、なんとなく河原に寄って、なんとなくアイス食べてたら、きれいな石見つけた! って彼がはしゃいでさ。
見てみたら、傷とかまったくない楕円型のきれーいな石だったの。
へえ、確かにきれいだね。でかしたねって言ったら、彼が急にまじな顔になってさ。
すべすべの石を見つけたら一番に見せたいのは、きっとこれから先もずっと森子(もりこ)だから、ずっと一緒にいて欲しいって言われた。
久しぶりにちゃんと名前で呼ばれたから、びっくりしちゃった!
あ、あたしの名前ってそういえば森子だったなあって思い出したよ」

そう言って頬を薔薇色に染め、大きな口で笑うもる子ちゃんと一緒に、わたしも笑った。
こめかみの辺りに少しの違和感を覚えながら、それでも出来る限りの近い温度感で笑った。


すべすべの石を見つけたら一番に見せたい。


なんてかわいい旦那さんだろう。
河原でアイスを食べながら、すべすべの石を愛でる二人を瞼に思い描くと、あたたかくて微笑ましい想いと、素直によろこべない(もや)とが入り混じった。

靄が覆い隠すほどのあたたかさは、持てなかった。


ごめんね、もる子ちゃん。

わたしはやさしい人間じゃない。
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