とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「結婚とか、そういう話。私の友達、年上の男とつき合って数か月で結婚したって子が何人かいるんだよね。
やっぱり男の人も三十半ばとか、それくらいになると焦るんだろうね。
子どもが成人するときの自分の年齢とか考えたらさ。家のローンとかだってあるわけだし」

そうだとしても、結婚するのはわたしじゃない。玲子さんだ。
いつするのかは知らないけれど、口ぶりからすると一年も先の話ではないだろう。


そうしたら、邑木さんとわたしは本当の不倫関係だ。

二人が正式に入籍したら、不倫という二文字はくっきりとした輪郭を持つ。


「なんか、ごめん。つまらないこと言っちゃったね。(とし)とかローンとか。
由紀ちゃんと彼は、はじまったばかりなのに」

「ううん、ぜんぜん。あ、もる子ちゃんの結婚式には呼んでね」

「もちろんだよ。あー、決めることいっぱいだ。式場はもちろんだし、招待状やら席次やら」

ふと、いつか買った分厚い結婚情報誌を思い出した。
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