とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「詩優、家まで送っていくから準備して。雨も降りはじめたし」
リビングに戻ってきた邑木さんはジャケットを羽織り、ポケットに入った車のキーをじゃらりと鳴らした。
窓を見れば小さな雨粒がぱらぱらと貼りついていた。
忘れ物ないよな、と訊ねる邑木さんに、詩優さんが首を縦を振る。
ひーくんの首も、同じように細かったことを思い出す。
「ご馳走さまでした、佐倉さん。本当に旨かったです。とくに牛すじ」
「いえ、そんな……」
詩優さんがひらひらと手を振り、その後ろで邑木さんがわずかに微笑んだ。
いつもより玄関の閉まる音が大きい。
胸の残響がなかなか消えない。
わたしは長いため息を吐き、ゆっくりと片付けをはじめた。
三人分の食器を食洗機に並べ、炊飯器の釜なんかは手洗いした。
なんとなく気になって、ガスコンロとシンクもピカピカに磨く。
手が濡れたついでだ、と排水溝も掃除した。
少し前に掃除したばかりだけれど、それでも排水口には鼻がひしゃげるような匂いと、ぬっとりとした汚れがこびりついていた。
息を止めて、ひたすら磨く。
無心になってそうしていたら、時計の長針はぐるりと進んでいた。
ふと、キッチンの隅に濃紺のハンカチを見つける。
邑木さんが忘れていったのだろう。
リビングに戻ってきた邑木さんはジャケットを羽織り、ポケットに入った車のキーをじゃらりと鳴らした。
窓を見れば小さな雨粒がぱらぱらと貼りついていた。
忘れ物ないよな、と訊ねる邑木さんに、詩優さんが首を縦を振る。
ひーくんの首も、同じように細かったことを思い出す。
「ご馳走さまでした、佐倉さん。本当に旨かったです。とくに牛すじ」
「いえ、そんな……」
詩優さんがひらひらと手を振り、その後ろで邑木さんがわずかに微笑んだ。
いつもより玄関の閉まる音が大きい。
胸の残響がなかなか消えない。
わたしは長いため息を吐き、ゆっくりと片付けをはじめた。
三人分の食器を食洗機に並べ、炊飯器の釜なんかは手洗いした。
なんとなく気になって、ガスコンロとシンクもピカピカに磨く。
手が濡れたついでだ、と排水溝も掃除した。
少し前に掃除したばかりだけれど、それでも排水口には鼻がひしゃげるような匂いと、ぬっとりとした汚れがこびりついていた。
息を止めて、ひたすら磨く。
無心になってそうしていたら、時計の長針はぐるりと進んでいた。
ふと、キッチンの隅に濃紺のハンカチを見つける。
邑木さんが忘れていったのだろう。