とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「ちゃんと送受信できるか確認したいんで、スタンプ送ってください。なんか適当に」
「ああ、はい」
目についたスタンプをタップした。
詩優さんのスマートフォンがぽこんと間抜けな音を立て、受信を知らせる。
スタンプ送ってください、か。
ひーくんにも同じことを言われた。
あれはドタキャンした友達の、穴埋めとして参加した飲み会だった。
衣でかさ増しされた、ぎとぎとの唐揚げ。
曇ったグラスに薄いビール。
いまいちな食事に、いまいちな会話。
帰りに康くんのところに寄ろう。口直しがしたい。
あとどれくらいでお開きになるかな、と時計を眺めたときだった。
――あの。大学のときにも、俺、あなたに会ってます。
新宿の、刺身と生レモンサワーが人気の居酒屋で。
けっこう大人数の飲み会だったし、ちょっと話しただけだから覚えてないと思いますけど……。
隣に座っていた男は遠慮がちに、だけど勢いがあまったのか、大きな声で言った。
耳まで真っ赤に染めた彼を、わたしは覚えていなかった。
正直にそう告げると、彼は「そうですよね、ごめんなさい」と謝った。
彼を覚えていなかったわたしを、周りが冗談交じりに非難する。
彼はまた、「ごめんなさい、ごめんなさい。俺が余計なこと言ったから」と謝った。
こうやって思い返してみれば、はじまりも終わりも、ひーくんはわたしに謝ってばかりだった。
「ああ、はい」
目についたスタンプをタップした。
詩優さんのスマートフォンがぽこんと間抜けな音を立て、受信を知らせる。
スタンプ送ってください、か。
ひーくんにも同じことを言われた。
あれはドタキャンした友達の、穴埋めとして参加した飲み会だった。
衣でかさ増しされた、ぎとぎとの唐揚げ。
曇ったグラスに薄いビール。
いまいちな食事に、いまいちな会話。
帰りに康くんのところに寄ろう。口直しがしたい。
あとどれくらいでお開きになるかな、と時計を眺めたときだった。
――あの。大学のときにも、俺、あなたに会ってます。
新宿の、刺身と生レモンサワーが人気の居酒屋で。
けっこう大人数の飲み会だったし、ちょっと話しただけだから覚えてないと思いますけど……。
隣に座っていた男は遠慮がちに、だけど勢いがあまったのか、大きな声で言った。
耳まで真っ赤に染めた彼を、わたしは覚えていなかった。
正直にそう告げると、彼は「そうですよね、ごめんなさい」と謝った。
彼を覚えていなかったわたしを、周りが冗談交じりに非難する。
彼はまた、「ごめんなさい、ごめんなさい。俺が余計なこと言ったから」と謝った。
こうやって思い返してみれば、はじまりも終わりも、ひーくんはわたしに謝ってばかりだった。