とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「な、なにも……。なにも、してない」

「俺のハンカチ握りしめて、なにしてたの」

「違います、これは」

「呼んでたよね、名前」

「よ、呼んでないっ」

首をふるふると左右に揺らした。


解放して。(ゆる)して。


そんな気持ちで縋るように、違う。違うの、と喘ぐように繰り返す。
説得力はまるでなくて、視界は潤みはじめた。

こんなの、気持ち悪いに違いない。
嫌がられる。拒絶される。

恋人ごっこの域をあまりにも超えた行為。


「ちが、う……」

力なく漏らすと、そっと目尻を拭われた。
あたたかい指先に、張りつめていた糸をふつりと切られる。

「かわいいことするな、君は」

本当に、この(ひと)はかわいいしか言わない。
< 167 / 187 >

この作品をシェア

pagetop