とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「すぐに帰るよ。そうだ、無理にすることはないから」

「えっ」

「由紀ちゃんが触られたくないときはなにもしないから、嫌だってときはそう言って。
ここに住んでるからって変に譲ったり、遠慮する必要はないから」

「……わかりました」

想像していない言葉だった。

邑木さんが求めているのは躰の関係だと思っていた。
つき合ってほしいと言ったのは耳障りをよくするためであって、実際には定期的に会って躰の関係を持とう、という誘いなのだと。


この(ひと)は、いったいなにがしたいのだろう。


「邑木さんって、よくわからない」

ぽつりとこぼした。

「そうかな」

「そうですよ。あの、おかしな性癖とか、そういうのってないですよね」

なんだか不安になってしまい、思わず口走った。
性癖なんて、ひーくんにだって訊いたことはなかった。

「そうだな……。おかしくはないだろうけど、少しめずらしい、ならあるかもしれないな」

「めずらしい?」

ぎょっとして訊き返した。
「だろうけど」に「少しめずらしい」に「かもしれない」なんて、この(ひと)はわたしの不安を煽りたいのか。
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