とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「造形的にかっこいい部類だとは思うけど、俺は熊系しか興味ないからなあ。
しんちゃんみたいな、でっかくてワイルドなのが最高。
俺の友達も何人かしんちゃん狙ってたって、由紀に話したっけ?」

しんちゃんモテるんだよなあ、と惚気(のろけ)はじめる康くんに、はいはい、とわたしは相槌を打つ。


従兄の康くんは三年前、ゲイであることを家族にカミングアウトして勘当された。
いつもやさしい叔父さんと叔母さんがそんなことをするなんて、わたしには信じられなかった。



――世の中が変わりつつあってもさ、同僚や隣の家の子どもがゲイなのと、自分んちの一人息子がゲイなのは、受け止め方はそりゃ違うよな。
うちの親、小さい子とかすげえ好きだし。
じいちゃん、ばあちゃんになりたかったんだろうなあ。



いつも陽気で一見チャラそうに見える康くんが、あんなに哀しそうな顔をしたのは後に先にもあのときだけだった。

わたしは知っている。
そういう康くんだって、子どもが好きなことを。
幼い頃のわたしの記憶には、いつだって康くんがそばにいた。

電車の中で赤ちゃんが大声で泣いて、お母さんが申し訳なさそうにしていれば、「いやいや、それがその子の仕事なんで。俺より働いてて、えらいですよ、この子」と笑って、その場を和ませた。
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