とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「……パンやさんに向いた手ですね。あったかくて」

呟くと、邑木さんの顎先が肩に乗せられた。
強張っていた躰にますます力が入る。

「由紀ちゃん、パンやだなんて信じてないだろう」

微かな笑い声が、熱っぽい耳朶を撫でる。
あたたかい指先は、指や爪のかたちをゆるゆるとなぞっていった。

「夕食は……なんですか」

わたしは言葉を絞り出す。
会話を途切れさせたら、この(ひと)に負けてしまう。

「トマトのパスタと牛肉のカルパッチョ。あとリコッタチーズと苺のサラダ。
カルパッチョは買ってきたものだけど」

全体的に赤いな。
そう思いつつも、パスタもカルパッチョもチーズも好きなわたしにはうれしいメニューだった。

だけど一つ、気にかかる。

「苺のサラダって、苺と野菜を一緒に食べるんですか」

うん、一緒に。
低く呟き、邑木さんは指を絡めていった。
わたしのすべての指が、あたたかい指と交互に絡み合う。

視界に入っているなら、まだよかった。
後ろ手ではなにも見えず感触だけが頼りで、変に敏感になってしまう。
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