とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
「邑木さんはワイン、飲まないんですか」
「ああ、運転するから」
邑木さんは炭酸水の入ったグラスを揺らしながら、微かに眉を下げた。
玲子さんとのマンションには毎日は帰らず、ここへ泊まることがある、と邑木さんは前に話していた。
それなのにわたしがここで暮らしはじめてから一度も泊まらないのは、明らかにわたしを気遣っている。
それとも、わたしがいるなら泊まりたくはないのだろうか。
あくまで短い時間を過ごしたいのだろうか。
これまでこの男は、他の女の人とはどうつき合ってきたのだろう。
「いままでは、どうだったんですか」
なにが、と隣に座る邑木さんが身を乗り出す。
「いままでの公認不倫の相手とは、どんなふうにつき合ってきたんですか。
わたしみたいに、ここに住んだ人もいるんですか」
「公認不倫は、君がはじめてだよ」
「そういう気遣いはいいですよ。ぜんぜん気にしないんで、教えてください」
「本当に、由紀ちゃんがはじめてだよ」
さっきよりもゆっくりと、深く、真っ直ぐ言われた。
ソファーの上に置いた左手に、邑木さんの右手の先が触れる。
それは微細な、触れるか触れないかの距離。
感覚だけで触れ合う。
「ああ、運転するから」
邑木さんは炭酸水の入ったグラスを揺らしながら、微かに眉を下げた。
玲子さんとのマンションには毎日は帰らず、ここへ泊まることがある、と邑木さんは前に話していた。
それなのにわたしがここで暮らしはじめてから一度も泊まらないのは、明らかにわたしを気遣っている。
それとも、わたしがいるなら泊まりたくはないのだろうか。
あくまで短い時間を過ごしたいのだろうか。
これまでこの男は、他の女の人とはどうつき合ってきたのだろう。
「いままでは、どうだったんですか」
なにが、と隣に座る邑木さんが身を乗り出す。
「いままでの公認不倫の相手とは、どんなふうにつき合ってきたんですか。
わたしみたいに、ここに住んだ人もいるんですか」
「公認不倫は、君がはじめてだよ」
「そういう気遣いはいいですよ。ぜんぜん気にしないんで、教えてください」
「本当に、由紀ちゃんがはじめてだよ」
さっきよりもゆっくりと、深く、真っ直ぐ言われた。
ソファーの上に置いた左手に、邑木さんの右手の先が触れる。
それは微細な、触れるか触れないかの距離。
感覚だけで触れ合う。