とことわのその ― 獣と絡まり蔦が這い ―【加筆修正版更新中】
冬の夜の真ん中を、ばさりと切り取ったような静けさ。

どうして触れなかったのだろう。
急速に、不安が押し寄せた。


やっぱり、おかしい。


きっとわたしは酔ってしまった。
そう、これは酔ってしまってから。

自分に言い聞かせ、唇を開く。
甘酸っぱい苺の香りが、仄暗い部屋で微かに弾ける。

「昨日……」

昨日? と邑木さんが訊き返す。
だけどもう、身を乗り出してはこない。

「昨日、ごめんなさい」

「なんのこと」

「わたし、昨日……」

「嘘。わかってるよ。いいよ、言わないで。それに謝ることもない」

「でも」

「俺が君のことを知ったように言うのは、確かに間違ってた。怒られたって無理ない。
でも、車から飛び出したり、女の子が夜遅くに一人で出歩くのはやめて欲しいかな。お願いだから」

「……はい」

これも俺が言うことじゃなかったらごめん、と軽い調子で言って、邑木さんは映画のザッピングをはじめた。
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