好きになっちゃ、だめでしたか?
 1日の授業が全て終わって夕食前、ちょうど1人で片付けをしている春樹君のところに行った。

 春樹君はわたしに気付くとすぐに「おつかれ」と声をかけててくれた。

「おつかれ。あのね……春樹君」

「ん?」

 春樹君はやっぱり今日も微笑みを向けてくれる。

「明日、花火の前に話があるんだけどいいかな……?」

 言い終えたしゅんかん、一瞬だけかたまったように見えた。

「うん、分かった」

 だけどすぐに口角を上げた。わたしがなにを言いたいのか分かっているような表情だった。

「ありがとう」

 じゃあ、と言い春樹君から離れて蒼の姿を探す。

 クラスメイトと話している蒼の姿をすぐには見つけられたけど……。

 蒼のことをじっと見ていると目が合った。最近ならすぐ逸らされていたのに今日は違った。

 蒼はクラスメイトと離れるとわたしに近付いてくる。わたしの目に映るのは、蒼だけだ。周囲の全てが霞んでいる。

「ひさしぶり」

 蒼はずっと旅行にでも行っていたみたいに言う。

「ひさしぶり?」

「なんで疑問形?」

 ふっと蒼は笑った。ひさしぶりに見た蒼の笑顔だった。その瞬間、目のふちが熱くなってきて、だけど手をぎゅっと握って堪える。

「明日……花火のときに話があるんだけどいいかな?」

「いいけど……」

 蒼は一度視線を下げた。

「絶対だからね? 逃げても追いかけるんだからね」

「うわっ、留衣こわっ。ホラーかよ」

 と言って、蒼は大げさに反応を見せてくる。

 いつもの蒼だ、いつものわたしたちだ、わたしが望んでいる蒼だ。

 でも、やっぱりどこかで壁を感じてしまっていて……。でもきっとそれはわたしのせい。わたしが中途半端にしているせい。

「ちゃんと……蒼に伝えたいから」

 それまで笑っていた蒼は眉を下げを「分かった」と静かに声を出した。
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