好きになっちゃ、だめでしたか?
 これは多分、一華の言っていたカップル限定のものだ。
 
 でも、るいさんがいる前で春樹君をつれてなんかいけない。

 お兄ちゃんのクラスに目を向けると、こういうときに限っていない。

 大切な異性……誰を連れていけばいいんだろう……はやくしないと、ビリになっちゃう。

「あ、蒼!」
 
 すぐに自分のクラスに顔を向けて走りはじめる。蒼がこっちを向いているのが見える。

 蒼は幼馴染で、わたしのことを助けてくれた人で、恋人じゃなくても大切な異性なのは間違いないんだ。

「蒼、ちょっといい?」

「え、俺?」

 目を丸くしている蒼の手首を掴んで走りはじめる。

 春樹君がこっちを向いていることには気付いていた。でも……春樹君の手首を掴むことはできなかった。

 ゴールのところにいるマイクを持った人に紙を渡すと【大切な異性】と叫ばれた。

「その、大切な、幼馴染です」

 走ったせいで息が切れる。

「なるほど、幼馴染。まあ……異性だからOK。これからの2人の幸せ願ってます」

 と意味不明なことを言う委員は、わたしたちに3という紙を渡した。

 どうやら、3位でゴールできたみたいだった。

 その後2人で席に戻ると、突然一華に手首を握られ校舎の方に連れられていく。
 
 一華の手首を握る圧が強い。少し、痛い。

 一華は立ち止まるとわたしに顔を向けた。

「さっきの、なんで大野にしたの?」

「あれが1番いいと思ったから。だって……るいさんがいるから」

 一華は「確かにそうだよね」と、握っていたわたしの手首を離した。

 一華は、急にごめんね、と下を向く。わたしは息を吸って拳を作った。

「わたし、もう少ししたら、春樹君を解放しようと思う」

 さっきの、るいさんと話していた春樹君の顔がちらつく。

 わたしは、春樹君からあんな笑顔を引き出すことができない。

 きっと春樹君は優しいから、わたしに本当のことを言うことができない。それならわたしから、春樹君の手を離すしかない……。

「でも、あと少しだけ、一緒にいてもいいかな」

「留衣が傷付かないなら。もし辛かったら、わたしがいるから」

 一華は今度はわたしの手をそっと包んだ。

 

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