世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 もしかして身内に甘えているのだろうか。それとも、尾澤の前だけきちんとやって、他の人の前では……ということだろうか。やっぱり根っこは変わらないか。
「……もうこれ以上周りに迷惑かけないようにしないとな。責任取らなきゃなー」
「ま、待ってお父さん……もしかして? 私は反対!」
 陽鞠は正気になってと言わんばかりに、悠真の肩を揺らす。
「――陽鞠、国民の三大義務は習った?」
「納税、勤労、教育を受ける」
「そう。パワハラやったり、問題起こしてる社員や上司でも、介護とか病気とかじゃない限り、働かないといけない」
 世の中は他人の犠牲や不幸の上で平穏に暮らせる。
 問題ある社員やパワハラ上司も、会社に所属している以上、どこかに配属しないといけないし、部署や事業所のスタッフ達が犠牲になるのは避けられない。
 今回たまたま犠牲者が明王寺店のスタッフ達で、それが春の台でも変わらない。
「犠牲者を間接的に増やしてたのは事実。だからこれ以上増やさないように、お父さんがまたなればいい。陽鞠とは関わらせないから」
「ちょっとまって、陽鞠と関わるの禁止⁈ ふざけんなよ? 私の娘でしょ!」
 結花は机の上を強く叩く。しかし、悠真の顔色は変わらない。陽鞠は突き刺す視線を向ける。
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