世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「な、なんで?! お父さん、どこに行くの?!」
 結花は立ち上がって、なんでと繰り返す。
「あー、相変わらずキャンキャンうるさいねぇ。いい加減落ち着いたしゃべり方出来ないの?」
 静華はおおげさにため息つきながら、結花に冷たい視線を向ける。
 親族達も、結花の超音波のような声に、眉をしかめたり、額に手をあてたりしていた。
 若い頃はよくても、アラフォーになれば落ち着くと思っていた。しかし、いつまでもお姫様扱いを求め、年相応の態度や言動ができないままになってしまった。
 諸悪の根源が長年甘やかし続けてきたから。

 呉松家の跡継ぎが結花であることを推してたのは周子だけ。しかし親族達は良輔の方がふさわしいと内心思っていた。
 静華も候補に挙がっていたが、当の本人がやる気ゼロ、結花と周子で確執ありだったこと、彼女は良輔の方がいいと言っていたから。

 陰では、結花が明博と血がつながってないこと、トラブルを起こしてばかりで、わがままな性格なのに、跡継ぎなんて何考えてるんだと親族達は軽蔑していた。
 ある程度年いったら、結花の性格も落ち着いたものになるだろうと多少思っていたが、結局メンタル成長しないままになってしまった。

 周子に合わせて結花を推しているフリをしていただけだった。
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