世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 逆らったら面倒くさいから。あとで陰湿な嫌がらせを食らうのが分かっていたから。

 葬儀や今の結花の態度を見て、親族達は良輔を跡継ぎにして正解だと思った。
 
「しずねえうるさいんだけど。黙ってくれる? この行き遅れババアが!」
 結花の中では静華は結婚していないままで終わっている。
 言わないだけだ。本当はしていることを。それを知らないのは、周子と結花だけ。
「今そんな話関係ないでしょ。相変わらず、論点ずらしとか、人のコンプレックス突く話しかできないの? それで人を屈服させた気でいるんだね。ほんと人を不愉快にさせる天才ね」
 静華は冷静な口調で言うものの、手汗がでていた。    
 
 昔ならすぐに折れていた。妹が泣いて周りに被害者アピールするから。
 彼氏を寝取られた時もそうだった。
腹立たしさと無力感と妹の見た目にはあらがえないことの悔しさなどなど、全て心の奥底にしまって、もういいよと降参した。
まさか妹が姉の彼氏と関係もつなんて思わなかったから。
 その代わり妹に対しての軽蔑と侮蔑と憎しみの感情が湧き出た。
 いつかその感情をぶつけそうで怖いから、妹が得意げに彼氏と遊んでいた姿を思い出すのが嫌だから、大学進学を機に離れた。
 顔を見るだけで負の感情がマグマのように出てくる。
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