僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
勉強とバイトに明け暮れる日々。
そんなあるとき、穏やかな稲妻のように、天宮くんのことを思い出す。
神経伝達物質。
大学の心理学の授業で、そんな用語を耳にしたからだ。
「ドーパミンとセロトニンなら、みんな知っていますよね。神経伝達物質の中でもわりと有名ですからね」
言葉尻にクセのある教授が、ホワイトボードに書いたカタカナをマーカーで指し示す。
「ドーパミンは気持ちが昂ったとき、セロトニンは心が癒されたときに分泌されるんですね。つまり、恋に落ちたときに大きく作用するんですね」
――『どんなときに色が見えるの?』
――『神経伝達物質が活性化したときだって、医者は言ってた』
――『しんけいでんたつぶっしつ……?』
――『うん、ドーパミンとかセロトニンとか』
遠い昔に交わした会話が、あの日の波の音とともに耳によみがえる。
そんなあるとき、穏やかな稲妻のように、天宮くんのことを思い出す。
神経伝達物質。
大学の心理学の授業で、そんな用語を耳にしたからだ。
「ドーパミンとセロトニンなら、みんな知っていますよね。神経伝達物質の中でもわりと有名ですからね」
言葉尻にクセのある教授が、ホワイトボードに書いたカタカナをマーカーで指し示す。
「ドーパミンは気持ちが昂ったとき、セロトニンは心が癒されたときに分泌されるんですね。つまり、恋に落ちたときに大きく作用するんですね」
――『どんなときに色が見えるの?』
――『神経伝達物質が活性化したときだって、医者は言ってた』
――『しんけいでんたつぶっしつ……?』
――『うん、ドーパミンとかセロトニンとか』
遠い昔に交わした会話が、あの日の波の音とともに耳によみがえる。