※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「――――どうして森の中に家があるんですか?」


 どれぐらい歩いたのでしょう――――アリシャがそう尋ねます。そこには大きな家が建っていました。王都にあるアリシャの家とさして変わらない程、大きなお屋敷です。


「そりゃぁ当然、人が住むためですよ」


 散々アリシャに意地悪をされた妖精は、少しだけ小ばかにしたような言い方をします。ささやかな仕返しのつもりでした。


「それもそうですね」


 アリシャは小さく息を吐くと、真っ直ぐ、家の入口へと向かっていきます。中からは美味しそうな食事の香りがしました。アリシャの口に涎が溜まります。
 妖精は「ただいま戻りました!」と言いながら、壁の中をすり抜けて行きました。アリシャは屋敷の中に駆け込みたいのをグッと堪え、扉の前で居住まいを正します。

 ややして姿を現したのは、アリシャと同じぐらいの年齢の少年でした。銀色と緑が混ざったような、世にも変わった髪色に、瞳は青味がかった緑色です。銀糸や金糸の織り込まれた高そうな洋服を身に纏っていて、中性的な綺麗な顔立ちをしています。この森の神秘的な雰囲気と相まって、見る人が見たら妖精のようにも見えます。


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