※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「いえ、主催者として当然のことです。
それより、妹さんはまだ体調が悪い様子。控室で休まれた方が良いのでは? 俺が案内をしますから、デルミーラ嬢はどうぞ、このまま会場でお楽しみください。あなたにダンスを申し込みたい友人が、何人もいるようなので」


 エルベアトはそう言って、チラリと背後を振り返る。その途端、瞳をギラつかせた男性がずいと身を乗り出した。


「まぁ……何て嬉しいお申し出でしょう。けれど、これ以上皆さまにご迷惑をお掛けするわけにはいきませんわ。わたくしには、妹の面倒を見る責任がございますから」


 デルミーラが微笑む。


 ――――美しい。まるで慈愛に満ちた天使のようだ――――


 男たちが感嘆の声を漏らす。


「本当に宜しいのですか?」

「ええ、わたくしはもう十分、楽しませていただきましたわ」


 デルミーラはそう言って、エルベアトの手を握った。絵になる二人の触れ合いに、周囲が小さく息を呑む。


「また、どこかでお会い出来たら嬉しいです」


 そんな言葉を言い残し、デルミーラはキーテを連れて、夜会会場を後にした。
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