※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「え?」


 ティアーシャの胸が高鳴る。頬が熱を持ち、身体がふわふわと宙に浮かぶような感覚に襲われる。
 ノアはティアーシャの前に跪くと、彼女の手を優しく握った。


「今は未だ婚約を解消したばかりで、結婚について考えられないかもしれません。けれど、俺は貴女が――――ティアーシャ様が好きです。いつか貴女に認められたい。幸せにしたいと思っています」


 ティアーシャの頬を涙が伝う。躊躇いながらも、ノアはティアーシャを抱き締めた。


「私……私も、今度は……今度こそちゃんと、本当の自分を見て欲しいって」

「うん」


 嗚咽を漏らすティアーシャの背を、ノアは優しく撫でる。


「それで、私を好きになって貰えたらって……そう思って」

「その相手は『俺』ってことで良いですか?」


 ノアの瞳が微かに揺れる。期待と不安で揺れ動く、欲に濡れた瞳だ。つい先日までティアーシャが浮かべていたであろう表情によく似ていて、彼女は思わず笑ってしまう。


「もちろん! ノア様が良い。大好き!」


 幸せそうに笑うティアーシャに、ノアの笑顔が弾ける。
 それから二人は、初めての口づけを交わしながら、互いをきつく抱き締めるのだった。


(END)
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