※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 けれど、周りを見渡せば、あたしの味方になってくれそうな人は一人も居ない。
 幼い頃から仕えてくれていた侍女長も、執事も、みんな屋敷から居なくなってしまった。少しずつ、少しずつ、義母たちの不興を買って追い出されていき、すっかり入れ替わってしまったから。


「恨むなら、魅力のない自分自身を恨んでよね? ラファエルさまも、貴女の父親も、貴女じゃなくてわたし達を選んだと言うだけ。貴女が二人を惹きつけていられたなら、こんなことにはならなかった。全部貴女のせいでしょう?」


 メアリーと義母、二人分の高笑いが耳をつんざく。


(悔しい――――悔しい!)


 けれど、残念ながら言い返せる要素がなにもない。
 無理やり屋敷の出口へ連れて行かれ、ピシャリと扉を締められる。

 笑いたくなるほどの静寂。満天の美しい星空。あまりの情けなさに、思わずため息が漏れた。


(ここに居たって仕方がない)


 現状勝算がないし、虚しいだけだもの。

 だけど、あたしは絶対に諦めない。
 いつかこの家に戻ってきて、メアリーや義母から何もかも奪い返してやる。

 確固たる決意を胸に、あたしはクルリと踵を返した。



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