※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「知ったことか、ですって? 貴方さっき『復讐したい相手がいるのだろう?』って聞いたわよね⁉ 思い切り知ってるじゃない!」

「だが、手助けしてやるとは言っていない。お前が勝手にそう勘違いしただけだ」

「なっ……!」


 こんの屁理屈大魔神め! ――――いや、さすがは悪魔と言うべきか。

 とはいえ、今のあたしの状況で、メアリーと義母にすぐに復讐ができるとは思えない。
 既に家も財産も全てを失ってしまっているのだし、ここを追い出されたら路頭に迷ってしまうわけで。生きるためには悪魔に従うのが一番だってことは、あたしにだって分かっていた。


「分かったわ。契約した以上、言うことは聞く。
だけど、あたしは貴方の名前すら知らないわけで」

「ダミアンだ」


 悪魔が笑う。あたしは思わず目を見開いた。


「ダミアン? 思ったよりも普通の名前ね。人間みたい……」

「当然だ。俺は悪魔と人間のハーフだからな。
ダミアン・アスモデウスと言えば、お前にも分かるだろうか」

「アスモデウスですって?」


 アスモデウスといえば、貴族でその名を知らぬものは居ない。
 とても有名な悪魔公爵だ。

 とはいえ、彼に会ったことがあるものは殆どおらず、その実態は謎に包まれている。
 『悪魔』だなんて――――当然比喩表現だろうと思っていたのだけど。


「なるほどね……気に入ったわ」


 何故だろう。俄然やる気が湧いてきた。
 微笑むあたしを見つめつつ、ダミアンは満足気に目を細めた。



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