※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
自己紹介もそこそこに、トミーと二人、街を歩く。
ダミアンが治めるこの街は明るく、とても栄えていて、王都にも引けを取らない程洗練されていた。とてもあのおどろおどろしい屋敷がある場所とは思えない。
「いい街だろう? ここの領主は悪魔公爵なんて呼ばれてるけど、経営の才能はあるんだよな」
(知ってまーす。何ならあたし、あの屋敷に住んでるんですけど)
トミーは喋りたがりらしく、聞いてもないことを次から次へと解説していく。
海外から取り寄せた危ない薬のこと、最近取引した貴族のこと。
これから更に高位貴族の得意先が増える見込みだと彼は得意げに笑う。
あたしはというと、心の中で笑いつつ、「さすがです! 知りませんでした! すごいですねぇ! センスがありますね! そうなんですね!」なんて心にもない褒め言葉を口にしていく。
それでも、トミーは気を良くしたらしく、更に張り切って色んなことを喋り始めた。
(男って案外単純なのね)
ほんの少し褒めただけで、勝手に有頂天になってくれるんだもの。この男がチョロいだけかもしれないけど、この調子でいけば、ダミアンの指令をこなすのは楽勝かもしれない。
【この程度で満足するなよ、アイナ】
その時、背後から唐突にダミアンの声が聞こえてきて、あたしは思わず目を瞠った。振り返ってみても、彼の姿は目には見えない。
「アイナさん? どうしたの?」
「いいえ。なんでもございませんわ」
どうやらトミーにはダミアンの声は聞こえていないようだ。
だけど、彼は間違いなくここに居る。あたしを見ている。
あたしは静かに目を瞑り【だったらどうすりゃ良いの?】と心のなかで呟いた。
ダミアンが治めるこの街は明るく、とても栄えていて、王都にも引けを取らない程洗練されていた。とてもあのおどろおどろしい屋敷がある場所とは思えない。
「いい街だろう? ここの領主は悪魔公爵なんて呼ばれてるけど、経営の才能はあるんだよな」
(知ってまーす。何ならあたし、あの屋敷に住んでるんですけど)
トミーは喋りたがりらしく、聞いてもないことを次から次へと解説していく。
海外から取り寄せた危ない薬のこと、最近取引した貴族のこと。
これから更に高位貴族の得意先が増える見込みだと彼は得意げに笑う。
あたしはというと、心の中で笑いつつ、「さすがです! 知りませんでした! すごいですねぇ! センスがありますね! そうなんですね!」なんて心にもない褒め言葉を口にしていく。
それでも、トミーは気を良くしたらしく、更に張り切って色んなことを喋り始めた。
(男って案外単純なのね)
ほんの少し褒めただけで、勝手に有頂天になってくれるんだもの。この男がチョロいだけかもしれないけど、この調子でいけば、ダミアンの指令をこなすのは楽勝かもしれない。
【この程度で満足するなよ、アイナ】
その時、背後から唐突にダミアンの声が聞こえてきて、あたしは思わず目を瞠った。振り返ってみても、彼の姿は目には見えない。
「アイナさん? どうしたの?」
「いいえ。なんでもございませんわ」
どうやらトミーにはダミアンの声は聞こえていないようだ。
だけど、彼は間違いなくここに居る。あたしを見ている。
あたしは静かに目を瞑り【だったらどうすりゃ良いの?】と心のなかで呟いた。