※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「本当に?」

「ええ。本当はひと目見た瞬間から、わたくしはトミーさまの虜でしたの。
貴方は優しくて、とても頼りがいがあって。
その瞳――――見ているだけでゾクゾクしちゃう。小麦色の肌も、わたくしの肌と並べると、とても素敵なんでしょうね」


 スルリとトミーの顎を撫でれば、彼はニヤリと微笑んだ。
 あたしのことを抱き寄せながら「俺も君が好きだよ」なんて言葉を囁いている。


 ダミアンの言葉――――全力で愛を叫ばせるのは、この男には無理だ。
 トミーは己への愛情がとても強い。相手との愛に溺れるよりも、溺れている相手を見るのが好きなタイプだ。

 俺を見て。俺を認めて。俺を愛して――――ならば、彼の欲しているものを与えてやろうじゃないか。

 長期戦でじっくりと堕とすという手法もあるだろうけど、この男にそれだけの時間と手間をかけるのは勿体ない。


【アイナ、上出来だ。この男を我が屋敷に誘い入れろ】

【――――了解】


 彼の描いた筋書きと、あたしの描いた筋書きはどうやら同じらしい。思考が似てるんだろうか? 確認の手間が省けてとても助かる。


「トミーさま、今からわたくしの家に来てくださいますか?」

「ええ、もちろん」

「嬉しい……!」


 飛び切りの笑顔を浮かべ、あたしは彼の頬にそっと口づける。


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