※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「アイリーン嬢か。愛らしい名前だ」


 ロズウェルは言いながら、手やら腰やらベタベタ触ってくる。気持ちが悪いし最悪の気分だ。


(大体、この男、既婚者だろう?)


 倫理観がバグっている。愛人が少なくとも数人、居るんじゃなかろうか。


「では、わたくしはこれで」


 ふわりと花のように微笑めば、彼は大きく目を見開いた。


「もう少し良いだろう? 私と一曲、どうだろうか?」


 ロズウェルはそう言って、切なげな表情であたしを見つめてくる。

 どうやら狙い通り、彼の関心を惹けたようだ。
 ならば尚更。
 今夜はこれ以上の長居は無用である。


「またの機会を楽しみにしていますわ」


 彼の頬をそっと撫で、ドレスの裾を翻す。ロズウェルはあたしの後ろ姿を、欲の孕んだ眼差しで見つめていた。




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