※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
「クロシェットさまはこれからどうしたいですか? 
俺なら貴女の名誉を取り戻すためのお手伝いができると思います。国を守ったのは誰なのか――――真実と、ザックという男の悪行を知らしめることが」


 セデルに同意を示すように、ウルとフェニがゆっくりとクロシェットを見る。
 けれど、彼女は小さく首を横に振った。


「いいえ。わたしはもう、あの国に戻りたいとは思いません。汚名を晴らしたいとも思いません。既に父母も他界しておりますし、大した思い入れもありませんから。
それに、ザックさまのことを思い出すと、やっぱり辛くて……。経緯はどうあれ、彼が魔王を倒した英雄であることに間違いありませんから」


 今更、クロシェットが聖女だと知られたところで、一体何になるだろう?
 彼女の力を信じない者も多いだろうし、感謝をされたところで虚しくなるだけだ。

 それに、ザックが他の女と結婚するのを近くで見るのは辛かろう。
 そもそも、彼からはまるで、クロシェットが存在しないかのような扱いを受けているわけで。


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