※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
(もう二度と、誰にも利用されたくない)


 一度はどうでも良いと思った。消えてしまいたいと思った。
 けれど、本当は自分自身を――――人生を諦めたくなどない。

 寂しい思いも、辛い思いもゴメンだ。


「――――よろしければ、しばらくこの屋敷で過ごしませんか?」


 セデルの提案に、クロシェットは静かに息を呑む。


「これまで辛い目に遭われてきたのです。今はゆっくりと心と身体を休めてください」

「けれど、セデルさまにそこまでしていただくわけには……」

「貴女は先程、俺のことを助けてくださったじゃありませんか。長時間苦戦を強いられていましたし、あの魔獣は毒を持っていました。クロシェットさまがいらっしゃらなかったら、俺は助からなかったかもしれません。遠慮なく、ここにいてください」


 セデルはそう言って、クロシェットの手を握る。
 温かい手のひら、穏やかな微笑みから、彼の心からの感謝が伝わってくる。
 久々に感じる人のぬくもりに、クロシェットの瞳に涙が浮かんだ。


「よろしくお願いいたします」


 かくして、クロシェットはセデルの屋敷に身を寄せることになったのだった。


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