※追加更新終了【短編集】恋人になってくれませんか?
 午後、殿下に言われた通りの時間にお茶を運ぶ。
 けれど、応接室の中に居たのは、何故かわたしの両親だった。


「お父様! お母様まで、一体どうして?」

「それは、その……殿下にお招きいただいて」


 両親に会うのは実に2か月ぶりのこと。
 あの汚職事件に遭遇した日、わたしは両親との約束をすっぽかしたし、記事はホーク様を通じてやり取りをしたため、最後に会ったのは出仕の前だ。


(まさか、わたしを飛び越えて二人にお咎めが⁉)


 殿下のスクープを狙うなんて馬鹿なことを考えたのは、両親だと誤認させているのかもしれない。だとすれば物凄くまずい状況だ。


「殿下! あの……両親はわたしの企みには無関係なんです! 全部全部、わたしが独断で始めたことで、その……」

「マイリー、その件はお咎めなしだと言った筈だよ? 大丈夫。二人を責めるために城に呼んだわけじゃないんだ」


 殿下はそう言って、わたしの顔を上げさせる。優しい表情。嘘を吐いているわけではなさそうだ。


「あぁ……でも、君の両親が来たことはちゃんと記録しておいてね」

「へ……はぁ」


 わたしは言われるがまま、殿下と両親を念写する。殿下は大層満足そうに笑った。


< 90 / 528 >

この作品をシェア

pagetop