続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
第5章 王子様の決意とお姫様の涙
「わ、颯凄い人だね」 

俺は、元旦の参拝待ちで、ごった返す人混みの列で美弥が転ばないように、掌を握る。

「こら、よそ見すんな。転ぶから」

「颯っ、やめてよ、転ぶなんて……縁起悪いよ」

「ばぁか。俺が、手もってんのに転ぶかよ」

美弥は、俺を見上げると、ほんのり頬を染める。その表情を見ながら、俺は口角を上げた。

「俺の手、離すなよ」

「うんっ、離さない」

子供みたいにニコッと笑う美弥に、俺は未だに心臓が跳ねる。

この無邪気な笑顔を見るたび、幸せな気持ちでいっぱいになるから。

「あ、颯、順番次だね」

美弥は、何の願い事をするのか、少しだけ緊張した面持ちを見せた。俺は思わず、美弥の頬を突つく。

「願い事一緒だから」

「え!何で私の願い事分かるのっ!?」

「顔に書いてある」

美弥が、今度は頬を膨らませた。

「そんな訳ないもんっ」

「あっそ。じゃあ、あとでベッドの上で答え合わせしようぜ」

年末年始と散々美弥を抱いたせいだろうか。
美弥が眉を寄せていく。

「やだ。お家帰ったら、颯が、得意先の人から貰ってきた、福笑いしたい」

美弥が、大きな瞳を細めると、拗ねた様な顔をしている。

(福笑い、そんなにしたいかよ)

思わず、豪快に噴き出した俺を見て、美弥が俺を肘で突いた。

「もう……笑いすぎだよー……」

「ごめん。いいよ。でも、福笑いしたら、ベッドな。ちなみにすぐ抱きたくなるのは、美弥が好きだから」

そう、耳元で小さく囁けば、美弥は、耳まで真っ赤にして頷いた。
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