続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
俺は、美弥の手を引きながら、賽銭箱の前に二人で並んだ。

ちゃんと元旦に初詣なんか来たのは、いつぶりだろうか。

チャリンと賽銭箱に5円玉を投げ入れて、美弥が本坪鈴(ほんつぼすず)を持って、ガラガラと鳴らした。そして、俺達は、同じタイミングで手拍子を鳴らすと、瞳を閉じて神様へ願い事をする。

(美弥と家族になれますように……)

俺の願い事なんて、言わなくても神様には筒抜けだろう。それでも、こうして参拝に来れば、何だか(おごそ)かな気持ちになり、願い事をせずにはいられない。

瞳を開ければ、俺が願い終わっても、隣の美弥は、まだ瞳をぎゅっと閉じたまま、願い事をしている。

「そんなにお願いしなくても叶うだろ」

ゆっくりと瞳を開けた美弥が、俺に手を引かれて拝殿を後にしながら、新年早々、唇をこれでもかと尖らせた。

「そんなの、分かんないもんっ……ちゃんと颯と……」

(ちゃんと俺と家族になれますように、だろ)

案の定、同じ願い事をしていた事に、俺は唇を持ち上げながら、そこまでしか言葉にしない美弥に、新年早々やっぱり意地悪をしたくなる。
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