続・23時のシンデレラ〜甘い意地悪なキスをして〜
パタパタと足音がして、半開きの寝室の扉が大きく開かれて、お味噌汁の香りが鼻を掠める。

「もう、颯、せっかくの水曜日なのに、そろそろ起きてよ」

見れば美弥が、長い黒髪を揺らしながら、頬を膨らませているのが見えた。

「なぁ、子供らが、アウトレットモール行きたいらしいけど、行く?」

「あ、行きたいっ」

俺は、クククッと笑った。

「美弥が行きたいのは、併設してる、キッチンの展示場だろ」

美弥が、バレた?と小さく舌を出した。

俺が、美弥を連れ戻してから、半年後、安堂不動産が手がけるアウトレットモールは、無事にオープンし、三年経ったいまでも、週末は、大盛況だ。

美弥の企画した、『スマイルキッチン』は、家族のライフスタイルに合わせて、天板の高さ調節ができ、収納棚も、サイズから、容量まで、1000種類以上のパーツをお客様自身がカスタマイズできる、完全オーダーメイドのシステムキッチンで、累計5千万台の大ヒット商品となった。

オプションとして、前面クロスを、写真をプリントできる事や、好きな文字を入れることも可能な事ともあって、未だに新規受注の納期は1年待ちだ。

「次はね、シンクの蛇口や、シンクの形、材質にとことん、こだわりたくて。『魅せるキッチン』の企画を進めてるの」

美弥は、産休を取ったあと、現在は、企画営業第一課の企画部に在籍して、日々新しいシステムキッチンの企画・開発に邁進している。
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