切ない両想い
切ない両想い
あれは約1年前、いつもの喫茶店。

当時、親しい友達だった彼…ダンに、やっとのことで、想いを打ち明けようと決心した時のこと。

お互いに大事な話があるということで、譲り合いの末、じゃんけんで勝ったダンのほうからになった。

彼は伏し目がちに、

「長期出張が決まったんだ…」

そう告げた。

フランスへ、丸1年間の長期出張。

先にそれを言われてしまったら、今さら告白なんて出来ないじゃない…。

「そうなの…。元気でいてね、くれぐれも身体には気をつけて…」

笑顔で言おうとしたのに、涙が溢れて止まらなくなった。

「マオ…どうしたの?」

「ごめんね…泣くつもりはなかったけど、淋しくて…」

「そんな、泣いて淋しがるなんて、まるで俺のこと好きみたいじゃん」

ダンは軽く笑うけれど、私は何も言えず、ただ泣くしか出来ない。

今まさに自分が、最も嫌いな、ただ泣けばいいような女になっていることに気付き、ますます悲しくなる。
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