【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
そして思いきり手を振り上げた。


ーーパシッ


頬を思いきり叩くと、その衝撃でナシールは尻餅をついて倒れ込む。
そして頬を押さえながらワナワナと震えていた。


「なっ……貴様」

「その煩い口を閉じて下さる……?」

「こ、こんな事ッ……許さない、絶対に許さない」

「リリアーナ様っ、ひどいですぅ!ナシール様に手を上げ……ーーッ!?」


瞳に涙を浮かべながらナシールに駆け寄るチェリーをギロリと睨みつける。
その視線には殺意をたっぷりと詰め込んだ。
そしてチェリーに向けて地を這うような声で言った。


「もう一度だけ言うわ……わたくしは、その煩い口を閉じろと言ったのよ」

「……ッ」

「この無礼者ッ!チェリーを怖がらせるなとあれ程言っただろうが……っ」


この状況下でもギャーギャーと喚くナシールに、周囲の視線は冷ややかを通り越して怒りが滲んでいる。


「婚約者になったからと言って偉そうに……むぐッ!?」


ダンテが慌ててナシールの口を塞ぐ。
確かに馬鹿過ぎてリリアーナ目線では面白いのであろうが、リリアーナでなくなった今、とても楽しめそうにはなかった。
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