【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで
ノエリアは顔を伏せて胸で手を握り込んだ。
隣国の王太子の機嫌を損ねてしまったかもしれないと不安になったのだ。


「ふふ、こんな事くらいで怒るわけないだろう?僕の前では無理に笑わなくて良いよ」

「‥!!」


ノエリアは動揺を隠すように必死だった。

ホールデンはノエリアの表情の違いや気持ちを察した事はない。
「いつも不機嫌だよな」「どうしてもっと愛想よく出来ないんだ」
ホールデンはノエリアに、いつもそう言うのだ。

ノエリアは「お気遣いありがとうございます」と伝えた後、何事もなかったかのようにネストールを案内した。


ネストールは、ノエリアの冷めた心にそっと寄り添い温めてくれた。
ネストールの隣はとても居心地が良かった。

ホールデンと共にいれば、ノエリアがホールデンの機嫌を伺い、気を遣う事が多かった。
そんなノエリアにとっては優しく手を差し伸べてくれるネストールの行動は、とても新鮮に思えた。 
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