【短編集】婚約破棄から幸せを掴むまで

ホールデンは鈍器に殴られたような衝撃を受けた。

自分が愛していたレイチェルは笑いながら平気で人を殺せるような女だったのだ。
そしてホールデンはずっと自分を支えてくれたノエリアではなく、そんなレイチェルを選んだ。

そしてノエリアが居なくなったと分かった瞬間‥今まで感じた事のなかった気持ちが込み上げてくる。

社交の場へ出る際に要人達の名前を覚えて、横でホールデンに教えてくれたのは誰だ?
ホールデンの代わりに色々な仕事をこなしていたのは?
今日から自分は何をしなければならない?

(僕はこれからどうすればいいんだ‥?)

漠然とした不安にホールデンは飲み込まれていた。
それ程までにノエリアに甘えて、全て任せていたのだ。

そう、全てを。

『わたくしが責められるより先に、殿下の不貞がバレますが‥‥そちらの対応や言い訳は大丈夫ですか?』

ノエリアの言葉が頭を過ぎる。
ホールデンは何も考えられずに、ただ混乱していた。

自分はノエリアが居たのにも関わらず不貞行為を働いていた。
そしてレイチェルの言う事を全て信じてノエリアを牢に入れた。

その牢の中で、ノエリアは殺された。

(ノエリアが居なくなる事を心から望んでいた筈なのに‥)



それなのに、ノエリアが居なくたった途端に、自分の未来が見えなくなった。



焦燥感は容赦なくホールデンを責め立てた。
横で機嫌よく笑うレイチェルの手を握っても、以前のように幸せな気持ちにはなれなかった。




(ホールデンside end)
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