落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 神官長グラウニクの言葉に答えると部屋を辞す。部屋の外には案内してくれた衛兵が待っていて、私を兵舎へと案内してくれた。兵舎には数多くの兵士がいて、各々武器の手入れなどをしている。雰囲気は殺伐としていて、声をかけるのも躊躇われるほどだ。
 衛兵は「少し待て」と私を置いて兵舎の奥へ行き、腕を組んで座る大柄な男に話しかけると、なにかを告げた。大柄な男は一瞬嫌そうな顔をしてこちらを見ると、つかつかと早足でこちらにやって来た。
「お前、怪我を治せるのか?」
「は、はい。簡単なものならば……」
「ふん……まあ、いないよりましか。オレはバーディア大隊長アレン。では早速だが出陣する。今日は迷いの森に踏み入る予定だ。覚悟して付いて来い」
「わかりました」
 迷いの森、と聞いて肌が泡立った。幻獣の国の入り口、入れば生きては帰れないという噂の森である。小さい頃、いたずらや悪いことをすると、森に捨てるぞと散々脅かされてきた場所。そこへ今から行くと聞いて、少し怖気づいたのだ。
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