落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 ちょっと納得してしまった。たまねぎを生で食べると辛みが強い。カットしている時も、汁が飛ぶと目が痛くなる。それは料理をしたことのある者なら常識だけど、ワイルドな竜は迂闊にもガブリと丸ごと食べたのかもしれない。その姿を想像すると、ちょっといや、かなり可愛い。
「でも、これは煮込んであるから甘いですよ? ねえ、リンレン?」
「はい。しっかり火を通してあるので大丈夫だと思います」
「……本当か? 騙してないか?」
 よっぽど生のたまねぎが辛かったのか、ヴィーは疑いの眼差しを私に向けた。
「本当ですよ。ほら、私が食べてみますね……わあ、美味しい! 美味しいですよ! さあさあ、ヴィーも一口どうぞ?」
 と、冗談でたまねぎ入りの自分のスプーンを隣に座る彼の口元に持っていった。もちろん、それをヴィーが口にするなんて思っていない。……思っていなかったのだけど、なんと彼は、一瞬悩んだあと、それをパクリと自分の口に入れたのである!
「う……ん? ん? んん? ん、んまいっ! これは旨いな! 俺の食べたたまねぎと違うぞ!」
「あ、そ、そうでしょう? 美味しいんですよ、たまねぎは……」
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