落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
 グラウニクは表情を歪めた。ドーランの書庫から盗んだ本には、伝説の宝の形状など書かれていなかったのだろう。調べに調べぬいたティアリエスでさえ、よく知らなかったのだから当然だ。宝といえば形のあるもの、そう考えるのが自然だ。
「そ、それは、お前から引き剥せるのか?」
 落ち着きを取り戻したグラウニクが問う。その質問にはヴィーが答えた。
「出来ない。森羅万象は力を渡す人間を選んでいるのだ。お前のように腐った根性の奴に力をゆだねるものか! 心が美しく、高貴で可憐で優雅なパトリシアだからこそ、森羅万象に認められたのだぞ?」
 そうだそうだ! と合いの手を入れようと思った瞬間、後半部分を聞いてぐっと言葉に詰まった。心が美しく、高貴で可憐で優雅……それはいったい、どこのどなた様? 別の世界に住んでいる「パトリシア」の話じゃないの? そんな私の戸惑いなどお構いなく、グラウニクは激昂した。
「くそっ! 宝がそんなものだったとはな。これでは私の長年の計画も台無しではないか。ああ、溢れるほどの財宝と権力が水の泡か! いや、まだこちらには人質がいる。ふふ、そうだな、ウェアラビットを返してほしくば、私を権力と財宝を持つ王にしろ! 森羅万象の力なら出来るのだろう?」
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