落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「そうですねえ。バーディアのために奔走していましたから」
 バーディアに残ったダルシアは、国王と共に国の立て直しに尽力している。国王は、地に落ちた信頼を取り戻すために、徴兵された民、ひとりひとりに頭を下げて回った。ダルシアはそれに付き従い、こんなことになった経緯を説明したのち、二度と過ちを犯さない、と約束したのだ。
 高名な聖騎士ダルシアの言葉と国王の真摯な態度、それにより国民の気持ちも幾分か落ち着き、今では、みんな以前と変わらない生活に戻っているのだとか。
 またバーディアはドーランと国交を結び、人間と獣人が交流する、世界で初めての国になった。迷いの森は両国の商人が行き交う賑やかな場所になり、ドーランで人間を見かけることは珍しくなくなったのである。陽だまり雑貨茶房のアミュレットや薬草茶も、ドーランだけじゃなくバーディアからの注文も多くなってきた。
「パトリシア!」
「あっ、ようこそ、ふたりとも! 遅かったですね」
 坂道をヴィーとティアリエスがゆっくりと上って来る。ヴィーは後ろ手になにかを持っていて、若干顔が緩んでいた。
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