落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
「遅れてすみません。王がどうしてもパトリシアに渡したいものがあるらしくて、その準備に手間取りました」
「渡したいもの? なんでしょうか?」
 肩を竦めたティアリエスの側で、もぞもぞしながらヴィーが差し出したのは……。
「まあ! なんて綺麗な花冠。これを私にくれるのですか?」
「あ、ああ。中庭に咲いた花で作ってみた。お前にやる」
「本当ですか! 嬉しいです、ありがとうございます」
「い、いや。たいしたことはない、うん」
 花冠は赤や桃色が混じった、鮮やかなものだった。これを、簡単に作ってしまうなんて、ヴィーって案外器用なのね、と思いながら手に取ろうとした時。あることに気付いてしまった。
 ヴィーの指先は、切れて血が滲み、とても痛々しくなっていたのだ。
 ……たいしたことないなんて言ったくせに、本当は相当時間がかかったのだわ。指先に怪我をしてまで、私のために……。
「ヴィー、手をこちらに」
「ん? なんでだ?」
「傷を治療します」
 彼の大きな手を取り、両手で包み込む。しかし、逆にヴィーはその手で私の手を握り返した。
「必要ない。これは勲章のようなものだからな」
「勲章?」
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