落ちこぼれ白魔術師ですが、潜伏先の幻獣の国で賢者になりました ~絶対に人間だとバレてはいけない、ドキドキスローライフは溺愛付き~
第二章 パトリシアのアミュレット
 ホミとリンレンの朝は、薬草作りから始まる。
 干して乾燥させた薬草を、手で大まかに千切って乳鉢に入れたら、そこから更に細かく擦り潰す。そして、擦り潰した薬草を麻の袋に詰めるという作業を毎朝行っているのだとか。
 両親が生きていた頃は、いろんな薬草を薬として売っていたらしいけど、幼い兄妹には知識がなく、一番簡単な薬草茶を作り生計を立てているのだそうだ。 
薬草茶は数種類あり、昨夜救護所に持っていったものには「安眠効果」がある。他にも「鎮静効果」「不安解消」の効果がある薬草茶もあった。
 しかし、最近は貴重な薬草が生えなくなり、日々お茶の量も減っている。「これが続けばそのうち薬草茶も廃業です」と寂しそうに呟くリンレンの表情が忘れられない。
 自宅の作業場の椅子に座り、薬草を麻袋に詰める作業を手伝いながら、私は、健気で優しい兄妹のためになにが出来るかを考えていた。
 そして……あることを思い付いた。
「ホミ、リンレン。ひとつ提案があるのだけど」
 そう言うと、ふたりは手を止めてこちらを見た。
「あのね、言ったと思うけれど、私は白魔術師で回復や治癒が専門なの。でも、実は治癒魔術が苦手で……」
「えっ? あたしの怪我を治してくれたのに苦手なの?」
「うん。才能のある人はもっとすごいの」
 たとえば、うちの兄とか……というのは話が長くなるので割愛する。
「だけどね、そんな私にもひとつだけ得意なことがあって」
「それは、なんですか?」
 兄妹は身を乗り出し、次に続く言葉を待つ。
「アミュレットよ」
「アミュレット……確か護符という意味ですよね」
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