君にたくさんのありがとうを



「俺さ、眠ってる間夢を見たんだ」


「夢?」



ぽつりぽつりと神代くんは話し始めた。



「詩織や圭佑たちや母さんがお見舞いに来てくれた夢も見たし、それに……」


「それに?」



言葉を詰まらせた神代くんの頬は、何故かほんのり赤く見えた。


それになんだろう。


続く言葉がとても気になる。



「詩織に好きって言われた」


「なっ、なっ……へっ!?」



お見舞いに行ったことも事実だったことにも驚いたけれど、まさかポロリと出てしまった告白さえも……



「え、なんでそんなに慌ててるの?」



そ、そうだよ。


これは神代くんが見た夢の中の世界であって、現実でなんて一言も……



「本当なの?」


「ち、ちがっ……くもなくてその……」



神代くんのことは好き。


それはつい最近自覚したこと。


でも……



「ちゃんと詩織から聞きたい」



そう優しい目で言われた。






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