裏側の恋人たち
「ねえ、美味しいお酒が飲みたいの。もうこの話は終わりにしない?じゃないと部屋に戻るわよ」

軽く脅しをかけると佐野くんは勘弁とばかりに肩をすくめた。

「1つだけ教えてください。恋愛も結婚もしない主義ってことじゃないですよね」

「そこまで考えてないけど。恋愛して深い関係になったらいろいろと面倒だなって思ってることは否定しない。結婚したいって思った相手がいたこともないから結婚の是非はともかくいまは求めてないって感じ。でも最近ネコでも飼って癒やされたいなとは思ってる」

「犬じゃダメですか」
「クマじゃダメですか」

声を揃えて言う二人に年齢も立場も違うけど、息が合ってるなと思う。

「ネコ一択で」

日本酒に手を伸ばし、手酌でグラス半分ほど飲み干した。
ああ、美味しい。


それから私の恋愛話を控えてもらうことでアルコールとスイーツを堪能することが出来た。

地元の銘菓を集めたという数種類のスイーツの中にあの栗まんじゅうがあるのに気が付いた。

「そういえば、先生はこれを買うためにホテルの車を借りたんですか?」

「いや、これだけってわけじゃなかったんだけど。結局浜さんに渡せたのがこれだけだったってだけで。実は他にも日持ちするものを他にも買ってあったんだけどね、浜さんに避けられて渡せなかったんだ」

「それはーーーそっか、なんだか申し訳ありません」
何だかちょっと居たたまれない。私が悪かったのかな。

「東京に戻ったら、また」
意味ありげに微笑まれ「すみません」とまた頭を下げた。

「甘いものが好きって言うのは二ノ宮さんに教えてもらって知ってたけど、アルコールがこんなに強いとは知らなかったよ」

「俺はもっと前から知ってましたよ。浜さんにはレディキラーも効かないって」

どういうこと?と佐野くんを見ると、
「姐さんには恩があるんです」とにかっと笑う。

「2年前、結婚式の二次会に出席しましたよね。その後の三次会のこと覚えてます?」

「三次会?」

行ったような気もするけど、2年前は職場関係の結婚ラッシュで付き合いで参加した二次会が多かったからどれのことかよくわからない。

「日向先生って記憶ないですか。ちょっとキザな」

「あああーいたいた。『特別なポルシェ乗せてあげようか』の若いドクターでしょ。ナメたことばかり言ってたからちょっとむかついて潰してやったわね」

そのドクターなら記憶がある。

ふたば台のナースにしては綺麗だね。
今夜ホテルの部屋で飲み直さない?
明日は出会った記念に君が乗ったことないような高級車に乗せてあげる。

なんて言いながら「ご馳走するよ」と言って私にアレキサンダーなんて強いカクテルを勧めてきた男だ。


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