裏側の恋人たち
「と言うわけで、オレ将来有望です。姐さん、青田買いしませんか」

福岡先生がピシリと固まる。

「私、ただのナースだし病院を作ったり事業を興したりする予定はないんだけど」
どうやって君を雇えばいいのかわからないわと言うとお腹を抱えて笑われた。
さっき固まっていた福岡先生も肩をふるわせているし。

「せんせー、このヒト、これ何なんすか?マジですよね。これすっとぼけてるわけじゃないですよね」

「ああ、浜さんのこれね、本気で言っているから。仕方ないよ」

「マジか。どうやって落とせばいいんだ」

「いやいや、佐野くん。浜さん僕のだから佐野くんにはあげないよ?」

「オレも姐さんが欲しいです。先生は前進どころか後退してますよね?」

いえいえいえ、私はどっちのものでもないですけど。
言い合いしている二人はとりあえず放置でいいっか。
何だか二人で楽しそうに話しているし。

佐野くんが持ってきてくれたお料理が美味しくて。もうひとくち食べちゃおう。

白ワインは飲んだから今度は赤にしようかなー。
いま食べてるお肉と合いそうだし。
でも次に食べようとしているのはタコのマリネだ。
赤より白の方がいいような気がするーーーいやここは日本酒かな。
さっきちらっと見たラベルの中に私が知っているものはなかったから、新しい味に出会える幸せの予感がする。
あーお仕事頑張ってよかったぁ。

「・・・さん、・・・さん、姐さん!」

「え、ごめん、何?何か言った?全然聞いてなかったわ」

佐野くんは小さく舌打ちして「姐さんはオレと福岡先生のことどう思っているんですかって聞いたんです」と渋い顔をした。

どう思ってるかと言われたらーーー
「佐野くんは弟とかわんこみたいで、先生はお兄さんとかクマさんみたいよね。佐野くんはわしゃわしゃしたいし、先生にはぼふっとしたい」

「ぇ・・・」
「やっぱり・・・・・・」

思っていることを正直に伝えたら二人にがっかりされた。

「姐さん、わしゃわしゃしていいですよ」
「浜さん、いつ飛び込んできて頂いても大丈夫です」

「どう思っているか聞かれたから言ったけど、実際やるかどうかは別の話だと思うわ」

「姐さんは冷たい」
「冷たくないと思うけど」
「いや、浜さんには距離を感じる」

そんなこと言われても困るんですけど。

「姐さん、結婚願望ありますか」

どうして君にそんなことを言わなきゃいけないんだとむくれると「口説く相手のことを深く知りたいと思うのは当然です」と言い切られる。

「若い男の子の中で年上の女を口説くことが流行っているの?」

「流行ってるのか聞くってことは、他にもこんなことがあったってことですよね。いったい他にどこの誰に告られたんですか」

「相手は私じゃないわよ」

私が否定すると佐野くんはちょっとホッとした表情になった。福岡先生は無表情で何を考えてるかよくわからない。


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