裏側の恋人たち
***
東京に戻って大将のお店に顔を出した。
「よお、地酒サンキューな」
「いいえ、どういたしまして。お店で出して良さそうなものありました?わたしの好みで選んだんで偏りがあったら申し訳ないですけど」
「いや、よかったよ。掘り出しものもあったしな。あれ、あの甘口の古酒と淡麗の辛口はふみかのボトルキープ用でよかったんだよな?」
「はい、あの2本以外は大将へのお土産ですからご自由に」
「ところで、あの二人のことなんだけど・・・・・・知ってるのか?」
大将の視線の先にいるのはテーブル席のお客さんに接客している桐生くん。
今夜吉乃はまだ来ていない。
「うん。意気投合したって聞いてます。一緒に出掛けたりしているんでしょ。吉乃が楽しいならよかった。あそこから先は私が口出すことじゃないしね」
後は二人の問題だ。
って、もともと二人の問題なんだけど。
私は勝手なことを言っただけ。
「ふみかに言われて実矢も冷静になったと思うよ。ちゃんと相手の立場に立った上で行動を起こしているはずだ。何事にも勢いが必要だって言うが、それはきちんと相手のことを思いやった上でのことだからな。でも、ふみかにあんなこと頼んで悪かったな」
「ううん。わたしも言いたいこと言っただけだったから」
「で、ふみかの方はどうなんだ?吉乃を実矢にとられて荒れてないか」
からかうように言われて思わず非難の目を向けた。
「友達の幸せを願えないような心の狭い女じゃないもん」
この人の前ではすねたような子どもっぽい言い方になってしまう。
「ははっ、そうだったな。ふみかは懐の大きな女だった。だけどな、そろそろ新しい恋をしたらどうだ。時には勢いも必要だぞ」
それをあんたが言うのかーーープイッと顔を背けてお酒を口に運んだ。
この大将、津川悠一は私と吉乃の高校の5つ上の弓道部の先輩だ。
OBの指導者として指導に来てくれていたことで知り合い、卒業以降もこうして付き合いが続いている。
7年前に結婚して多分だけど4年くらい前に離婚した。
元奥さんも私たちの先輩だった。
大将の同級生で同じ弓道部で、大将と高校生の時から付き合っていた人だった。
何があったのかは知らないけれど、5年前大将がこの店をオープンするときには奥さんの姿はなく、その後離婚したことを知った。
人の噂ではもう他の人と結婚して子どももいるらしい。
高校時代の私の憧れの人。
元カレと別れて以降わたしに恋人が出来ないのはちょっとだけこの人のせいもある。
東京に戻って大将のお店に顔を出した。
「よお、地酒サンキューな」
「いいえ、どういたしまして。お店で出して良さそうなものありました?わたしの好みで選んだんで偏りがあったら申し訳ないですけど」
「いや、よかったよ。掘り出しものもあったしな。あれ、あの甘口の古酒と淡麗の辛口はふみかのボトルキープ用でよかったんだよな?」
「はい、あの2本以外は大将へのお土産ですからご自由に」
「ところで、あの二人のことなんだけど・・・・・・知ってるのか?」
大将の視線の先にいるのはテーブル席のお客さんに接客している桐生くん。
今夜吉乃はまだ来ていない。
「うん。意気投合したって聞いてます。一緒に出掛けたりしているんでしょ。吉乃が楽しいならよかった。あそこから先は私が口出すことじゃないしね」
後は二人の問題だ。
って、もともと二人の問題なんだけど。
私は勝手なことを言っただけ。
「ふみかに言われて実矢も冷静になったと思うよ。ちゃんと相手の立場に立った上で行動を起こしているはずだ。何事にも勢いが必要だって言うが、それはきちんと相手のことを思いやった上でのことだからな。でも、ふみかにあんなこと頼んで悪かったな」
「ううん。わたしも言いたいこと言っただけだったから」
「で、ふみかの方はどうなんだ?吉乃を実矢にとられて荒れてないか」
からかうように言われて思わず非難の目を向けた。
「友達の幸せを願えないような心の狭い女じゃないもん」
この人の前ではすねたような子どもっぽい言い方になってしまう。
「ははっ、そうだったな。ふみかは懐の大きな女だった。だけどな、そろそろ新しい恋をしたらどうだ。時には勢いも必要だぞ」
それをあんたが言うのかーーープイッと顔を背けてお酒を口に運んだ。
この大将、津川悠一は私と吉乃の高校の5つ上の弓道部の先輩だ。
OBの指導者として指導に来てくれていたことで知り合い、卒業以降もこうして付き合いが続いている。
7年前に結婚して多分だけど4年くらい前に離婚した。
元奥さんも私たちの先輩だった。
大将の同級生で同じ弓道部で、大将と高校生の時から付き合っていた人だった。
何があったのかは知らないけれど、5年前大将がこの店をオープンするときには奥さんの姿はなく、その後離婚したことを知った。
人の噂ではもう他の人と結婚して子どももいるらしい。
高校時代の私の憧れの人。
元カレと別れて以降わたしに恋人が出来ないのはちょっとだけこの人のせいもある。